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2019年 07月 15日
中国地方で冬虫夏草の調査、普及活動を継続的にされている瀬戸内虫草団からの声かけで、広島市植物公園での講演、観察会に呼んでいただき、広島に遠征してきた。 前々日、広島入り。KMさん、KNさんファミリーに出迎えていただいた。翌朝から観察会の下見かね植物園内を見て回る。園ではこの時期、キシノウエトタテグモ生のクモタケが発生するということで、観察会ではそれを中心に見て歩く予定。この日は雨が降っていたものの、ここまではあまり降っていなかったらしく、クモタケも少ないという。それでもコース後半に比較的多く出ているポイントが見つかってほっとする。さらにここでしか見つかっていないというコガネムシ幼虫生の不明種を見せていただく。緑色がかった特徴的な色の分生子で見たことがない。Metarhizium属に相当するのではないかということのよう。一本を撮影させていただく。毎年数本が発生しているが、いまのところ見つかっているのはみなアナモルフ。テレオモルフが出るとするとどんな姿をしているのか楽しみだ。 午後、次のフィールドに向かう。以前、虫草祭を開催した森とのこと。そこに地元の生きもの屋さんたちも加わる。虫草屋Aさん夫妻、植物屋だけど虫草にずっぽりとはまっているUさん、コナジラミとザトウムシにはまっている虫屋のTさんペア、カエル好きなYさんと実に多彩なメンバーだ。 モミの木の下ではこの森の名物ハマキムシイトハリタケがたくさん出ていた。ハトジムシハリタケよりもさらに小さな鱗翅目生で、降り続く雨の中、ライトの光を頼りに探索する。他にアワフキムシタケとカメムシタケなど。 さらに移動して、滝に向かう渓流沿いのフィールドへ。いかにもよさそうなコースだ。地生型ではカメムシタケが安定している。いい朽ち木もあるじゃんと思って見ていたらミドリクチキムシタケが。ここでは割と普通に出るらしい。みんなで発見した記録をつきあわせてみると、他にコメツキムシタケ、クモ生アカンソマイセス、ギベルラタケ、ハチ繭生不明種、クチキツトノミタケ、ヒメクチキタンポタケ、サビイロクビオレタケ、ホソエノアカクビオレタケ、コガネムシタンポタケ、ハナサナギタケ、コツブイモムシハリタケ、ハチタケとかなりの数にのぼった。やはりいいフィールドだ。 道中そして夕食時にはいろんな話を聞いた。 ずっとつきあっていただいたKNさんのご実家は牡蠣屋だそうで、海の幸の話を色々と。牡蠣は2−4月がいい時期なのだけど、生で食べるなら早い時期の、燻製など加工するなら後の時期のがいい、魚の食べ方はやっぱり刺身が良くて本当に新鮮なものだと身が勝手に弾けてしまう……などなど。海で暮らしたことのない僕は魚のことも、魚の味もたいして知らずに来てしまったんだなあと思わされる。長野に移住して蕎麦の味の違いはわかるようにはなったのだけれど。 虫屋のTくんは魚をやっていたのだけれど、そこからオサムシに、今はコナジラミという変わった遍歴の持ち主。コナジラミは成虫になるとみな似てしまうので、終齢幼虫の段階でプレパラートにして同定するのだとか。わかっていないことが多く未記載種がいっぱいいるのが面白いのだそう。Tくんが川魚をやっていることから今話題の環境DNAの話題に。「山中の川で環境DNA調べたらインドゾウのDNAが検出されたんだそうです。近くにインドへ旅行に行った人がいてそこからだったらしいです。こういう明らかに違うとわかる場合はまだいいですけど、まぎらわしいのが混在したら区別できません。そもそも元になるDNA情報の同定が怪しいケースもあるし。工学屋さんはそういう生物の基礎的なところを軽視する傾向があって心配です……」 生物を生物としてちゃんと見る生きもの屋の存在は今だからこそ必要といえるよなあと思う。冬虫夏草についても同じで、僕は冬虫夏草を、どう宿主を選んで感染して殺しているのか……という生態含め、生きものとして見たい、知りたいということなんだろうなとあらためて思う。 二日目、仕事本番。 午前中、講演。早めにスライドの準備をして来場者を待つ。予約なしの自由参加とのことで、テーマが冬虫夏草だし何人くらい来るのか始まるまでまったくわからない。 心配をよそに人が少しずつ入ってきて、開始時間近くには満席になり、追加の椅子を出してもらう事態に。予想以上の盛況。カウントしたら何と121人だったそうだ。 冬虫夏草だけで話をするのは今回が初めてだったし、どんな人が来るかも予想できなかったので、スライドを多めに準備しておき、顔ぶれを見てチョイスしようと考えていた。が、ためしに「実物の冬虫夏草を見たことがある人?」と聞いたら1/3〜半分弱はいらっしゃって、「今日まで冬虫夏草は知らなかった」方はほんの数人だった。そこでためしにカメムシタケの生標本を見せて回ると生の実物の威力でけっこうな手応えがあり。みなさん熱心そうだったし、混じっていた小さな子供たちもちゃんとついてきてくれそうだったので、用意した話はほぼフルに使い時間いっぱいまでやった。 途中の質問にも「子実体が伸びるまでどのくらいの時間がかかるのですか?」「体から出て来る場所は決まっているのですか?」「どうやって生える(感染する)のですか?」など、「知りたいけどわかっていないことが多いです」と答えざるを得ないような鋭いものが。 昼をはさんで午後は観察会。キシノウエトタテグモ生のクモタケを中心に見てもらうコース。これも予約なしの自由参加だったので参加人数は予想できなかったのだが、集まった人だかりを目にしてびっくり。ずいぶんいると思ったら講演よりも増えて130人いたそう。こうなるととても全体を見るのは難しく、職員の方、瀬戸内虫草団の方々と手分けしてになり、細かな対応はしきれなかった点が反省点となったが、実に予想外の事態だった。 今回、基本的には採集はなしとしたため、僕がクモタケの掘り出しをデモンストレーションとしてやる羽目に。掘り出しはいつもやっていることだけれど、大人数に取り囲まれてという状況は初めてでなかなかの経験だったが、何とか断面として掘り上げ、それを観察したり写真撮ってもらったりした。 クモタケ以外では先のMetarhizium属不明種、コガネムシ幼虫生でマユダマタケになりそうなもの、古いハチタケといったところだったが、クモタケはたくさん発生していて、ほとんどの参加者が自分で発見できるようになったようで、何とかやりきった感じ。 参加者の方から「宿主の同定、今ならそれこそDNAを活用するやり方もあるんじゃないでしょうか。面白いプロジェクトになりそうだけど……」というアイディアもいただいた。これにはなるほどその手があったかと思う。そのためには幼虫のDNAデータを収集することから始めなくてはならないわけだけど。 全体としては冬虫夏草というテーマに対してこれだけ熱心な人が大勢集まったことにとにかくびっくりさせられた。これにはやはり虫草団の方たちが何年にもわたって展示や観察会を積み重ねて来られたことが大きいのだと思う。継続的な活動をしている人の努力が実ることは素晴らしい。こちらもそれに乗って一緒に充実感を味わせてもらうことができた。 イベント終了後は、園内のセミ生らしいものを確認しに行ったり(虫草ではなかったのだけれど)、クモタケをもう一度撮影させていただいたりと、個人的にも大満足で広島への旅を終えることができた。
by ikkaku24
| 2019-07-15 21:15
| 菌類
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